こんにちは。
お話続けます。
歌うときってお腹を支えるの???
声楽家、Aさんのレッスンでは、
私からは呼吸上の問題点が
見えていたのですが、
Aさんは
ご自分ではなにもおっしゃらず、
レッスンに来て下さることが
続きました。
ところがある日、急に
「あのお、今さらですが、
歌うときって、
おなかは凹まないように、
しっかり支えるんですよね?」と
質問なさいました。
うーん。。。
なぜ、凹まないように
しっかり支えた方が
いいと思うんですか?と、
お尋ねすると、
大きな目をさらに瞪って
「え?!だってしっかり支えないと、
息がすぐなくなっちゃうし、
声の張りがなくなるし、
声量だって出ないです」
と。
さて、
ここをお読みの
指導者のみなさま、
もし、こう言われたら、
どうお答えになりますか。
いやいやいや、
支えるって意味は
そういうことじゃないから、とか、
支えると支えられた状態とは
全然違うんだよ、とか、
それをやったら
声が固くなるよ、とか
そもそも支えるっていう言葉の
翻訳が違うから、とか、
いろいろなパターンが
あるかと思いますが、
大切なのは、
歌う本人が
「支えなくちゃダメ」と
思ってるところを
解放することですよね。
なぜ、誰に、どのように必要か
これは「おなかの支え」だけに
限らないのですが、
⚫⚫しなくちゃいけない、
ということがあるのだとしたら、
それがなぜ、その人に必要なのかを
セットで伝えないといけないと
私は強く思っているんです。
表現は人間の身体が道具なのだから、
道具が違えば使い方も変わります。
共通していることと、
その人によって
ヴァリエーションがあることの
両方が存在します。
どちらかだけではないのです。
目指す山が同じなら
(←ここが重要。山が違う場合は話が変わる)
いかに確実に、
身体と心を痛めずに登るか、です。
Aさんの場合は
「しっかり支えよう」として、
反対に呼吸が止まっていました。
そりゃそうです、
過度の力を使おうとすると、
身体の外側の筋肉が働いて、
身体を絞めるからです。
ブレーキ踏みながら
アクセル踏んでるようなもんです。
こういうことをAさんにお話すると
「だから、フレーズが続かなかったんですね、
だから、胸声区が震えちゃうんですね、
でも、、、あああー」
と、ショックを受けられた様子でした。
そうです、
ここら辺はね、
すごくデリケートな部分です。
だって信じてきたことが
自分を苦しめてたなんて、
あってたまるか、ですよね。
いらないものを捨てるのは難しい
さて、ここからが問題です。
「ここが自分にとっては
マイナスだった」ところを
ご自分で見つけたとして、
じゃそれをやめればいい、と
できるなら、
話は簡単なんです。
それがね、できないんですよ。
自分が拠りどころにしてたものを、
自分で手放すことは
とてもしんどいことです。
そのままの状態で、
なんかを付け足してうまく行けば、
その方が簡単だし、ストレスないし、
気持ちも楽です。
でも、Aさんの場合、
「おなかをしっかり支える」
という概念は、
自分を阻害する要因になっていたので、
どうしても捨てる必要がありました。
「今までたくさんの先生に
お習いしてきましたけど、
全員の先生がおなかをしっかり支えてと
おっしゃってました!」
そうやってAさんは
主張なさるのですが、
先生がそうおっしゃったとしても、
Aさんには
良くない原因になってるんだから、
やめないと先に進めないんです。
「支えなかったら、
どうやって歌えばいいんでしょう」
と、アタマかきむしってるAさんに
「いつもの呼吸ワークで
出している声を使ったらどうですか?」と
お答えしたら、「は?」と、
きょとんとなさいました。
呼吸ワークでの声は
人に聞かせるための声ではなく、
自分の中を見つめるための、
柔らかくて温かい素朴な響きです。
そんな声で
大ホールに
響き渡るわけないじゃないの、と
言いたげなAさんでしたが、
じゃ、やってみますと
帰っていかれました。
そして、次のレッスンのとき、
Aさんは、またもやアタマを抱えて
登場なさいました。
つづく。
小さなヒント
自分にとっているもの、
自分にとっていらないもの、
どうやって判断しますか。

